「トーキョーN◎VA」シリーズは何故30年も遊ばれているのか

本ページは TRPGなんでも Advent Calendar 2022 の 25 日目の記事です。

いよいよ Advent Calendar 最終日!今回は私の大好きな「トーキョーN◎VA」シリーズを推しに推しまくります!

「トーキョーN◎VA」シリーズの歴史

「トーキョーN◎VA」が初めて発売されたのは 1993 年、当時ツクダホビーからボックスセットとして発売されたのが始まりです。2 年後の 1995 年にアスペクトから「トーキョーN◎VA The 2nd Edition」、そこから 3 年後の 1998 年に「トーキョーN◎VA The Revolution」、そして改訂版の「トーキョーN◎VA The Revolution REVISED」を挟んで、2003 年にエンターブレインから「トーキョーN◎VA The Detonation」、そして「トーキョーN◎VA」シリーズの最新版として 2013 年にエンターブレインから「トーキョーN◎VA THE AXLERATION」がそれぞれ発売されました。したがって、シリーズとして見ればおよそ 30 年にわたって遊ばれ続けている、歴史あるシステムです。

「トーキョーN◎VA」シリーズはなぜ売れたのか?

そもそも「トーキョーN◎VA」シリーズはなぜ売れたのでしょうか。これに関しては、デザインを手がけた鈴吹太郎氏(現 F.E.A.R. 社長)がこんな話をしています。

表紙が格好良かった

冗談のようですがこれは本当の話です。そもそも「トーキョーN◎VA」シリーズが売れたきっかけは、パッケージのデザインを手がけたイラストレーター・弘司先生のイラストが格好良かったからなのです。

ゴールデンルールを日本製の TRPG として最初に明記した

「トーキョーN◎VA」シリーズでは、判定にトランプを使ったり、タロットカード(をモチーフにしたもの)を演出のために使ったりと、当時としては珍しいシステムでしたが、これに関しては賛否両論あったそうです。理由は「タロットカードを他人に触らせるなんて出来ない」ということだったそうです。確かに、タロットカードと言えば「占いの道具」というイメージが強かった時代に、「神聖な占いの道具は他人に触らせてはいけない」という価値観を持つ人も多かったので、そういう否定的な意見もあったのですが、それを超えてなお、「トーキョーN◎VA」シリーズは遊ばれました。それは「国産 TRPG として初めて『ゴールデンルール』を明記した」ということでした。もちろん、国産 TRPG に限定しなければ、「ウォーハンマー」のように「ゴールデンルール」に相当する記載のあるルールブックは存在します。しかし、「ゴールデンルール」という名称を付け、それまでユーザーが暗黙の了解として行ってきたことをルールブックに明記した国産 TRPG は「トーキョーN◎VA」シリーズが初めてだったのです。

意外に思うかもしれませんが、「判定にトランプを使う」ということは、売れたり遊ばれたりする大きな理由にはなっていません。もし今、あなたが新しい TRPG のシステムを作ろうと思うなら、売れる理由として「判定方法が他のシステムと違って独特であること」は当てはまらないと考えてください。

「トーキョーN◎VA」シリーズが遊ばれ続ける理由

では、「トーキョーN◎VA」シリーズは何故 30 年もの間遊ばれ続けているのでしょうか?それに関しては鈴吹太郎氏本人曰く…

サポートし続ける

「ソードワールド」シリーズにも同じことが当てはまるのですが、これだけ長く遊ばれ続ける理由はただ一つ、「サポートし続ける」ことだと鈴吹氏は言います。おそらく、同一のシリーズを同一人物がこれだけの期間サポートし続けているのは、鈴吹氏曰く「俺と清松(みゆき)さんくらいじゃないかな」だそうです(「ソードワールド2.5」も、表向き名前を出してはいませんが、清松みゆきさんがサポート面で関与しています)。鈴吹氏は「自分が考えるサイバーパンク」を常に模索し続け、サポートを続けることで、「俺がやりたかったサイバーパンクとは『個別導入』なのだ」と 5 年掛かってその境地に達し、「トーキョーN◎VA The Revolution」から個別導入がシステムに組み入れられました(もちろん、個別導入自体はそれ以前からやっているユーザーはいたと思いますが)。ユーザーからの意見を受け、それに対してサポートを続け、システムを常にブラッシュアップして、そうやって「トーキョーN◎VA」シリーズは長年にわたって多くのユーザーに遊ばれるシステムになったのです。

サポートし続けよう

もし、あなたがこれから新しい TRPG のシステムを作り、多くの人に遊んでもらいたいと考えるなら、とにかく「サポートを続けること」を心掛けましょう。どんなにユニークで面白くても、サポートされないシステムはいずれユーザーからそっぽを向けられます。自分の作ったシステムに対して責任を持ち、ユーザーの意見を聴き、サポートし続けること、これが長く遊ばれる最大のコツです。

今回は遊ぶ側の視点というより、システムを作製する側の視点がメインになりましたが、昨今の同人システムが次から次へと作製・販売されることに関しては、とても多様性があって良い時代だと思います。

そんな時代だからこそ、私は新しいものも遊ぶし、歴史ある「トーキョーN◎VA」シリーズも引き続き遊びたいと思っています。

ようこそ、ニューロエイジへ。

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